金融円滑化法の出口戦略とは

金融円滑化:出口戦略

金融円滑化法が2013年3月に終了します。
金融円滑化法が施行され、多くの金融機関が条件変更等に対応してきたことは、中小企業の資金繰りの安定に大きく寄与しました。
その金融円滑化法の終了を前に、出口戦略という言葉を見聞きすることが多くなっています。
金融機関にとっての金融円滑化法の出口戦略とは何を意味するのでしょうか?
出口戦略というと何かの終わり(出口)をイメージしますが、金融機関にとっての金融円滑化法の終了をにらんだ出口戦略とは再生支援への「回帰」といえそうです。
そもそも、出口戦略とは、金融機関にとっては「真の意味で中小企業の経営改善につながる支援を強力に推し進めていく」という意味で使われているのです。従前より、金融機関は 中小企業の再生支援に積極的に取り組んできました。このことから、出口戦略とは、金融機関の中小企業再生支援への「回帰」を意味しているといえるのではないでしょうか。
但し、”真の意味で”という点には注意を要します。金融機関の再生支援は、金融円滑化法施行時期は返済の猶予という金融支援を行い、その間に、取引先企業の再建を 図る建付けでした。しかし、未曾有の不況から経済は徐々に立ち直る中、企業の「金融円滑化法利用後倒産」が増加しており、特に中小企業の再生は進まなかったとの 反省がなされています。
このような反省から、企業再生に於いては問題の先送りをせずに、抜本的な経営改善・企業再建をスピード感をもって行うことが希求されているのが現実です。
先送りをしないとは、事業の継続が見込まれない企業については、いたずらに企業の存続を長引かせることで、かえって経営者や取引先への悪影響が懸念されるため 自主廃業等を促す取組みが示唆されています。
金融機関にとっては、ケースによっては自主廃業を取引先との関係の中で促していくなどの取組みが求められている点においては、単なる回帰ではないともいえるかもしれません。

金融円滑化法の終了と出口戦略の関係

金融円滑化法の出口戦略

金融円滑化法の終了に伴う出口戦略とは金融機関が中小企業に対し「真の意味で中小企業の経営改善につながる支援を強力に推し進めていく」ことを意味します。
なぜ、いまさらながら経営改善につながる支援を強力に推し進めていくことを標榜しているのでしょうか。
その理由は、中小企業を取り巻く経営環境(外部環境)が金融円滑化法施行開始時と大きく異なることに起因しています。金融円滑化法施行時の中小企業の経営課題は「資金繰り」 であったといわれています。ともかく、資金不足(資金ショート)による企業破綻を防止することが一義的に重要であったのです。
しかしながら、金融円滑化法の施行により資金ショートを回避した企業の中で、持続可能な経営基盤への変革を資金返済猶予の間に実現した企業は多くありません。
むしろ、国内のデフレ基調、円高、国際化などの外部環境変化に対応できずに、販売不振を起因とした業績低迷に苦しむ企業が少なくありません。 このような状況を示しているのが、「円滑化法利用後倒産」が増加という事象です。
「円滑化法利用後倒産」の増加は、問題の先送り企業の倒産の増加と映ったのかもしれません。言い換えるならば、目先の資金繰り支援を行うための条件変更に応じるだけでは 真の企業再生など実現できるわけは無いといったところでしょうか。
出口戦略とは、金融機関に於いては、貸付条件の変更を行っている中小企業に対し積極的な経営支援活動(コンサルティング機能の発揮)を求められていると言えそうです。

金融円滑化法の終了で変わること、変わらないこと

金融円滑化法の終了に伴い金融機関の対応がガラッと変化し、企業倒産が増えるのではといった憶測が飛び交っています。
金融円滑化法の趣旨と金融庁監督指針を正しく読めば、そのような情報に右往左往することはありません。
コンサルタントの方も、金融機関銀行員)の方も、以下の「金融円滑化法の努力義務」と「金融庁監督方針」を理解することで、 今後の中小企業の再生支援の方向性を正しくつかめるものと考えます。

金融円滑化法の努力義務とは

金融円滑化法の出口戦略

金融円滑化法に於いては、金融機関は下記の努力義務を求められていました。

1.中小企業者に対する信用供与については、中小企業の特性及びその事業の状況を勘案しつつ、できる限り柔軟にこれに務めること。

2.債務の弁済に支障を生じる恐れがある中小企業から、債務の弁済にかかる負担の軽減の申し込みを受けた場合には、中小企業が営む事業についての 改善または再生の可能性を勘案しつつ、できる限り貸付の条件変更、旧債務の借換え等を行うように務めること。

3.中小企業の事業についての改善または再生の可能性を勘案しつつ、条件変更等の求めがあった場合には、他の金融機関(日本政策金融公庫などの政府系金融機関、 信用保証協会、中小企業再生支援協議会)などと緊密な連携を図るよう務めること。

金融円滑化法終了後の金融庁の監督方針とは

金融円滑化法の出口戦略

金融庁の平成24年検査事務年度検査基本方針では、金融円滑化法の終了にあたり、中小企業融資に係る金融検査が過度に厳格にならないように配慮する。」としており、 中小企業の経営改善や事業再生等を最大限支援していくための態勢整備が求められています。
また、金融検査マニュアル別冊「中小企業編」の改定により、金融円滑化法の制定に伴い追加された下記の文章が「恒久的措置」として設けられています。

「〜省略〜債務者が実現可能性の高い抜本的な経営再建計画を策定していない場合であっても、債務者が中小企業者であって、かつ貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に 実抜計画を策定する見込みがあるときは、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から1年間は貸出条件緩和債権に該当しない。」

つまり、経営再建計画を策定する見込みのある中小企業に対しては引き続き返済条件の変更などに対して、柔軟な対応を行うことが要請されているといえそうです。

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